【面白い物語.78】映画『TIME/タイム』
【今日のつまらない無駄話(導入)】
昔、ある占い師からこんな言葉を聞きました。
「時間を守ると、時間に守られるよ」
ふむふむ、どことなく説得力のあるお言葉。
(* ˘꒳˘)⁾⁾ウンウン
で、ボクは時間を守っていこうと心に決めた訳ですが、
小説新人賞の締め切り時間を守ると会社の出社時間に間に合わない。
会社の出社時間を守ると小説新人賞の締め切り時間に間に合わない。
…時間の神様、ボクは一体どうすれば?
(゚Д゚≡゚Д゚)?
さて!
本日は命懸けで時間を守る人々が登場する、おすすめSF映画作品のご紹介です!
『TIME/タイム』
【基本情報】
■メディア:映画
■ジャンル:SF・サスペンス
■放映時間:1時間49分
■発表年度:2011年
■製作の国:アメリカ合衆国
■映像監督:アンドリュー・ニコル
■脚本作家:アンドリュー・ニコル
■興行収入:約210億円
ウィル・サラス役
演:ジャスティン・ティンバーレイク
(当時:30歳)
シルヴィア・ワイス役
演:アマンダ・サイフリッド
(当時:26歳)
レイチェル・サラス役
演:オリヴィア・ワイルド
(当時:27歳)
ヘンリー・ハミルトン役
演:マット・ボマー
(当時:34歳)
フォーティス役
演:アレックス・ペティファー
(当時:21歳)
フィリップ・ワイス役
演:ヴィンセント・カーシーザー
(当時:32歳)
ミシェル・ワイス役
演:ベラ・ヒースコート
(当時:23歳)
レイモンド・レオン役
演:キリアン・マーフィー
(当時:35歳)
【ざっくりあらすじ】
遺伝子操作により、全ての人類は25歳で成長が止まるようになる。
世界の通貨は時間となり、人々は自身の寿命を代価に生活を送っていた。
ある日、貧民街に住む主人公は、理不尽な値上げにより大切な人を失ってしまう。
そして、世界を搾取し牛耳る富裕層たちに、復讐を誓うのだった。
【ちょっと感想】
ありそうで無かった設定で、とても楽しめました!
SFの表現方法として、とっても参考になる作品です。
想像力を刺激するワクワク感って、本当にいろんな武器になりますね!
SF・人間ドラマ・メッセージ性など、色々なものが見事に融合されたエンターテインメント作品を是非ご覧ください!
追伸:
ボク「縛られない自由な人生を下さい。」
社会「43年です。」
ボク「43年!? 38年のはずじゃ…?」
社会「定年退職年齢延長に伴い値上がりしました。」
【映画】『TIME/タイム』が面白い理由
(ストーリー論的に考察・評価・レビュー)
今回は異色のSFスリラー作品『TIME/タイム』のご紹介です。
サイエンス・フィクションとしては、エンターテインメント性に特化した、とても取っ付きやすい作風の映画でした。
「時間」をテーマにしていたことで、メッセージ性も非常に高い作品だったと思います。
・上位数%の富裕層が世界の富の大半を独占する世の中の縮図。
・時間は多い方が幸せか、それとも短い方が幸せか。
・身の丈に合わない富を急に持ち過ぎたら破滅を招く。
などなど。
そして、登場人物の名前も、何かしら時計のブランドになぞらえた命名だったのも、面白い点だったと思います。
また、プロット術やストーリー論としても、全体的にいろいろな面白さが内容された作りでした。
・冒頭の数分で世界観を説明しきった秀逸。
・「ディストピアもの」に代表される「欠け」のデザイン。
・追い詰められた者たちの醜い喚き(命乞い)による感情の揺さぶり。
・ギャップ・リレーション(貧困野良男と大金持ち令嬢の恋)
・富を得た直後の母の死(緩急の演出)
総じて、質の高い作品だったと言えます。
そして、本作はSF(サイエンス・フィクション)です。
SFには大きく分けて2つの種類が見受けられます。
・ゴリゴリに科学理論にのっとって、本当に実現しそうなファンタジーを理論上で描く。
・人間ドラマやサスペンス・ミステリーなどを生えさせるために、土台の世界観として利用し描く。
本作は後者でした。
本項では、「SFを土台にして描くことで得られる物語的効果について」掘り下げて考察、解説させていただきたいと思います。
結論から言うと、「視聴者の姿勢をマイルド(柔らかく)にできる」という点です。
本作『TIME/タイム』の本質テーマは、虐げられた人々が、巨大権力に立ち向かう「レジスタンス劇」でした。
(もちろん、他にもいろいろな要素はありますが。)
で、この「レジスタンス劇」を描くのには、SFは必須ではありません。
そのまま現代社会を舞台にして、腐敗した医療業界を描いてもいいし、学園ものでスクールカースト最下位のヲタクが生徒会長に挑んでもいいです。
これらは、リアリティを醸し出せる反面、視聴者を納得させる面白さを描くのはハードルが上がります。
現代社会が舞台なので、当たり前ですが、魔法やファンタジー、SFなどのごまかしが使えません。
なので、現実に起こりえる範囲で、ありそうな展開で描く必要があるので、作者の身勝手なご都合主義の展開では白けてしまいます。
そこで、SFなどの設定を応用することで、その辺りのハードルは下げられることできます。
本作のように、「ルールがシンプルで分かりやすく、想像力を刺激する秀逸な設定」を導入することで、ワクワク感が生まれます。
要は、レジスタンス劇のストーリー展開とは別に「この世界感をもっと知りたい」という、別の興味視点が生まれてきます。
例えば、
・時間を奪い合う腕相撲的な競技があるのか。
・警察は「タイムキーパー」と呼ばれるのか。
・タイムキーパーは強盗を防ぐために最小限の時間しか支給されないのか。
・時間が余ってても、撃ち殺されたらメーターが黒くなって奪えないのか。
などなど。
その世界観のルールにのっとった「なるほど」的な展開に、都度、面白さを感じます。
ゲームの基本ルールを知り、「クリアしたい!」と興味が湧いたプレイヤーが、ゲームを進める上でいろいろと展開を知って行く成長快感と同様のものです。
・こんな武器が存在するのか!
・ここに隠しダンジョンがあるのか!
・あの村人のセリフは、そういう意味だったのか!
などなど。
「ストーリーの展開としてちゃんと面白く納得させてくれるんだよね~?」という疑念姿勢から、「この設定世界のことをもっと知りたい!見せて!」という応援姿勢の度合いが増すカラクリです。
もう少し言うと、冒頭でしっかりと作り込まれた世界会であることをアピールできれば、ある程度、作者のご都合主義が出て来ても「その世界のルールを知らない自分が未熟だった」という錯覚を感じてもらうことも出来ます。
要は、ごまかせる度合いと確率が上がります。
ただし、当然のことながら、ただSFやファンタジー要素が盛り込まれていればいい訳ではなく、シンプルでありながら、きちんと作り込まれ、極限まで矛盾の無い世界観であることが重要です。
(そうでないと威厳が生まれないので。)
本作ではもう少し上手い使い方がなされていました。
最後、タイムキーパーの男が主人公とヒロインを追い詰めた際、「さて、どうなる?どうやって乗り切る!?」という時、タイムキーパーの男は、自分の時間を補給し忘れていたことで死亡し、逆転となりました。
「時間は都度、補給が必要。なくなれば死ぬ」というルールは冒頭で明確に提示されていたにも関わらず、想定外のどんでん返しとして成立していました。
その理由としては、「視聴者がこの世界観に慣れていない」という点です。
もちろん、勘が鋭い人は気づいていたと思いますが、多くの人は、想定外だったと思います。
「寿命が通貨」というのは、本作で初めて触れる概念です。
一度言われただけで、2時間作品を観ただけで、頭を回さなくてもあの展開が予想できるようには、なかなかなりません。
あの場面で「実は弾が切れていた」はリアルによくある話で容易に予想が出来ますが、「時間の補給を忘れていた」は、結構、頭を回転させていないと、気付かない事です。
きちんと種明かしをしていたにも関わらず、不意打ち感を増して、十分な納得感が演出されていました。
(タイムキーパーの男が、主人公から普段より多くの時間を与えられていたことが伏線でした。)
これも、創作世界であるSFを盛り込んだ、大きな効果と言えるでしょう。
以上、『TIME/タイム』という作品に秘められたの面白さの正体についての解説と考察でした。
ご高覧くださり、ありがとうございました!
質の高い空想設定は視聴者を応援姿勢にできる!
この記事を書いた人
~物語論研究20年~
~処女作が大手小説新人賞一次に通過~
~ポートフォリオ作品が新人賞最終選考~
~高い実績を持つ業界専門家から指導経験有~
~文章/文書に関し多くの資格を保有~
~大手外資系企業勤務(一流社畜)~
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