【面白い物語.67】映画『ベスト・キッド』
【今日のつまらない無駄話(導入)】
また、月曜日がやってくる…。
もうイヤです!
イヤだ、働きたくない、いい加減にしてくれ!
何度こんな苦痛に耐えればいいんだ!
休みの安息なんてあっという間、すぐに現実に引き戻される。
こんな人生あんまりだ、誰か助けて!
人って、どうすれば幸せになれるんですか???
「笑えばいいと思うよ」(碇シンジ 風)
そうだね、頑張って笑うようにするよ…。
おっと、忘れていた!
幸せになるにはもう一つ方法がありました!
そう、それはやっぱり面白いエンタメなのです♪
特に、長年の時を経てリメイクされるほどの名作は間違いないでしょね~。
さて!
本日は25年の時を経て本物のカンフースターによりリメイクされた傑作人間ドラマ作品のご紹介です!
『ベスト・キッド』
【基本情報】
■メディア:映画
■ジャンル:ヒューマンドラマ
■放映時間:2時間19分
■発表年度:2010年
■製作の国:アメリカ+中国
■映像監督:ハラルド・ズワルト
■脚本作家:クリストファー・マーフィー
■原作作家:ロバート・マーク・ケイメン
■興行収入:約530億円
ドレ・パーカー(シャオドレ)役
演:ジェイデン・スミス
(当時:12歳)
シェリー・パーカー(シェリー)役
演:タラジ・P・ヘンソン
(当時:40歳)
ミスター・ハン役
演:ジャッキー・チェン
(当時:56歳)
メイ・リン役
演:ハン・ウェンウェン
(当時:15歳)
マスター・リー役
演:ユー・ロングァン
(当時:52歳)
【ざっくりあらすじ】
仕事の都合で中国に引っ越してきたアメリカ人の母子。
12歳の主人公は馴染めない環境の中でいじめに遭ってしまう。
そんな中、カンフーの達人と出会い、師事を受け、その魅力に取り込まれる。
【ちょっと感想】
ジャッキーの凄さは決してアクションだけではりません、演技力も凄いんです!
宿敵役の子の憎たらしさもドラマに拍車をかけてくれます。
「どうしてそんなに闘いたいんだ?」という問いへの彼の答え、深すぎます…。
いち物書きとしては、「情報価値の作り方」について、多大なヒントを頂きました。
1984年の大ヒット作品、25年の時を超え、原作を上回るであろう奇跡のリメイク作となった本作を是非ご覧ください!
追伸:
ジャッキー「どうしてそんなに働きたいんだ?」
ボク「まだ将来が怖いから。」
ジャッキー様、心の怪我に効く炎はありませんか…?
【映画】『ベスト・キッド』が面白い理由
(ストーリー論的に考察・評価・レビュー)
今回は1984年発表の大ヒット映画『ベスト・キッド』のリメイク版作品です。
2010年に「ジャッキー・チェン」と「ジェイデン・スミス」のダブル主演として発表されました。
リメイク作品でありながら、新たな価値が加えれら、とても面白い作品として楽しませていただきました。
特に、ノースタントアクションのイメージが強いジャッキーですが、過去に傷を持つさえない中年として素晴らしい演技を見せてくれました。
米中合作である、「ジェイデン・スミス」は、あの有名俳優「ウィル・スミス」の実子であるなど、何かと話題の多い作品です。
いじめられっ子役であるジェイデンは小柄で細身、いじめっ子であるワンは目の吊り上がった憎たらしい顔つきであるなど、キャスティングのマッチ具合も素晴らしかったです。
「いじめ」や「健気な恋心」など、心を揺さぶる展開もしっかりとデザインされています。
さて、本項ではプロット術の観点から、「情報価値のデザイン」と「サブバリュー」について、簡単に考察と紹介をさせていただきます。
おさらいですが、ストーリーの価値は「続きが気になる」「真相が知りたい」といった情報に宿る価値です。
視聴者が本当に気になるものをデザインして、最終的に納得のいく結末や、意外などんでん返しを盛り込んだ裏切りを魅せることで、面白さが生まれてきます。
本作では、「異郷の地に引っ越した少年の顛末について」というのが物語の本筋でした。
生活はどうなるのか? 恋の行方は? 親子関係は? 武術大会で勝てるのか? などが主軸です。
しかし、ゆるやかなメッセージ性の人間ドラマなので、本筋として刺激の強い”引き”をデザインするのは不向きです。
(例:殺されるはずのない男[国の英雄にして軍隊技術の達人]が変死体で発見された。)
かといって、「武術大会に勝てなければ死刑になる」というのもあり得ない設定です。
(もちろん、本作のドラマ自体は面白いです。あくまで技法のいち例えとしての論法であることごご海容下さい。)
そこで、緩やかな雰囲気は崩さず、本筋とは別に、「もうひとつの情報価値(サブバリュー)」を作るという方法があります。
それが、本作で登場したミスター・ハン(演:ジャッキー・チェン)の存在です。
ハンは冒頭から、明らかに暗く不機嫌、とても落ち込んでる雰囲気でした。
ストーリー上で何かあったような描写もないのに、しょっぱなからダークモード全開です。
本筋である「少年シャオドレはこの先どうなる?」とは全く関係ない部分ですが、とても気になります。
なぜ気になるかというと、その理由は「違和感」です。
要は、気持ち的にスッキリしないからです。
よくストーリー上で使われる情報価値は、完全に隠されたものが多いです。
・犯人は誰だ?
・生き別れの父親はどこにいる?
・告白は成功するのか?
しかし、このミスター・ハンが醸し出す雰囲気は「辻褄が合わないもの」です。
結果としては、すでに「暗いオジサン」として表に出てますが、その理由が気になるといった感じで、過去に興味を持たせる性質です。
これだけスッキリしない(違和感で気持ち悪い)ものに対しては、「何か理由があるはずだ。真相を知ってスッキリしたい」と、気になる部分が生まれます。
ミスター・ハンの場合は過去の事故でしたが、他にも色々とデザインできます。
●横柄なクラスのガキ大将が、何故か学校で一番のひよっこにヘコヘコしてる。
=ガキ大将がクラスのマドンナのリコーダーを舐めた秘密を知ってる。
●富裕層である一流建築技師が、銀行強盗を犯して収監された。
=刑務所に投獄されている無実の兄を、中から救い出すため。
●男が女に告白して付き合うことになったが、翌日その男は同じ女に告白していた。
=実は女は記憶障害で昨日の出来事を忘れてしまう。
などなど。
本作の場合は、こちらから提示する「さぁ、これは何ででしょ~?」というものではなく、雰囲気のみで醸し出すところがとても秀逸でした。
視聴者にそれとなく悟ってもらうものであり、視聴者が自ら拾い上げるものなので、注意深く見てくれる。メリットもあります。
自分で選び取ったものにはある種の愛着が宿りますので、効果が高いのも注目ポイントです。
「そういう性格なのかなぁ」で流されないほど強烈に演じていたことで、それが実現していました。
分解すると、ミスター・ハンにああいう過去があるのと、シャオドレの今後には関連性や繋がりはほぼないものですが、きちんとストーリーとしての役割を果たしていました。
(もしかしたら、シャオドレを見て、亡くした我がの影をみていたのかもしれませんが、それはそれで素晴らしいです。)
もちろん、この違和感は物語の本筋にも応用可能で、とても効果を発揮します。
例えば、冒頭で説明した通り、ただの殺人事件発生としてではなく、「殺されるはずのない人間がおかしな形で殺された」など、違和感を盛り込むことで、「情報価値に付加価値を加えたデザイン」として、有効な手立てです。
以上、『ベスト・キッド』という作品に秘められたの面白さの正体についての解説と考察でした。
ご高覧くださり、ありがとうございました!
「違和感」は強烈な情報価値になる!
この記事を書いた人
~物語論研究20年~
~処女作が大手小説新人賞一次に通過~
~ポートフォリオ作品が新人賞最終選考~
~高い実績を持つ業界専門家から指導経験有~
~文章/文書に関し多くの資格を保有~
~大手外資系企業勤務(一流社畜)~
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