【面白い物語.52】映画『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』
【今日のつまらない無駄話(導入)】
みなさんも一度は考えたことありますよね。
「ドラえもんのひみつ道具をひとつ貰えるとしたら、何がいいか?」
永遠のテーマです。
この問いに「四次元ポケット」と答える愚か者には、是非とも卍固めを極めてやりたい今日この頃です。
*アントニオ猪木さん、大変お疲れ様でした。どうか安らかにお休み下さい。
さて!
本日は、みんなみんなみーんな大好き、国民的マスコットキャラクターが登場する劇場版の名作をご紹介です!
『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』
【基本情報】
■メディア:映画(長編アニメーション)
■ジャンル:SF・宇宙アクション
■放映時間:1時間36分
■発表年度:1985年
■製作の国:日本
■映像監督:芝山 努
■脚本作家:藤子 不二雄
■原作作家:藤子 不二雄
■興行収入:約12億円
剛田 武(ジャイアン)
声:たてかべ 和也
(当時:51歳)
【ざっくりあらすじ】
ある日、地球に手のひらサイズの宇宙人がやって来た。
彼は祖国で起きたクーデターから亡命して来た大統領だった。
事情を聞いた主人公たちは、追手から大統領を守ると決意をする。
今、惑星をまたいだ小さな大戦争が始まった。
【ちょっと感想】
子供の頃、あの戦闘シーンには本当に興奮したものです。
今でももちろん大好きです♪
あの勇気を振り絞るシーンもエモいです。
「誘拐劇」を上手く盛り上げる「匿い劇」という概念を勉強させていただきました。
子供向け国民的アニメーションでありながら、さり気なく国政のエッセンスを組み込んだ、大人でも楽しめる構図の本作を是非お楽しみください!
追伸:
あぁ~、ボクはぁ~、どうしてぇ~、社畜になるんだろう~♪
あぁ~、ボクはぁ~、いつ頃~、自由になるんだろう~♪
【映画】『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』が面白い理由
(ストーリー論的に考察・評価・レビュー)
今回は、皆さまご存じ国民的長寿アニメ『ドラえもん』から、その劇場版である『ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)』のご紹介です。
ファンタジーやアドベンチャー、勇気や友情などが溢れ、子ども心が躍る作品ですが、大人でも十分に楽しんでいただける作品だと感じます。
スネ夫がしずかちゃんの雄姿に触発され、勇気を振り絞り戦闘に繰り出すシーンや、大統領のパピが、しずかちゃんを救出するために身代わりになるシーンなど、エモい演出も多くある名作です。
さて、本項では、脚本術の観点から、「誘拐劇」と「匿い劇」について、考察、解説させていただきたいと思います。
まずは、「誘拐劇」と「匿い劇」について、簡単にその性質を整理していきます。
(「ふーん」って感じで軽く読み流して下さい。)
基本の”き”として、「誘拐劇」は身代金目的などで強制的に人をさらって人質にする展開です。
「匿い劇」は、追われ逃げている人を自分の陣地で保護し、追手から隠してあげる展開です。
物語りのキーマンが、敵の手中にあるのか、こっちの手中にあるのかの違いがありますが、当然のことながら、それぞれ面白さの性質や、描き方が大きく違います。
両方とも、攻めて守って、押して引いて、駆け引きや心理戦が描かれるという点は共通しておりますが、「誘拐劇」は追う者の心理、「匿い劇」は追われる者の心理がデザインされます。
(「ハラハラドキドキ」という点は、言葉にすれば同じですが、微妙~にニュアンスが違うということが伝わればと思います。)
もう少しかみ砕いた表現にすると、
・誘拐劇=いつ人質が殺されるか分からない。
・匿い劇=いつ誘拐されるか(襲われるか)分からない。
といった、ドキドキ感が演出されます。
ですが、明らかに違うのは、その「リスク度合いの違い」です。
「誘拐劇」の場合は、犯人もお金などの目的があるので、滅多なことで人質を殺さないため、比較的安心感がありますが、「匿い劇」は相手が全力で誘拐に向かって来るので、ゲームオーバー(誘拐される)に至るまでのハードルが比較的低い性質があります。
(目的の人物を見つけたけど、何かしらの目的で誘拐を一旦保留する、という展開はほぼありません。見つかったらほぼアウトです。)
で、ここまではそれぞれの性質の違いをダラダラを論じてまいりましたが、ここからは本作の面白さについて注目していきたいと思います。
作品をご覧いただいた方はお分かりの通り、本作は前半が「匿い劇」で、後半が「誘拐劇(救出劇)」とした構成でした。
この点が、面白さを生み出していたと言えます。
理由としては、「大統領パピを助けたい!という気持ちを前半で盛り上げていた」です。
誘拐された人を助けに宇宙まで行くのは、それなりの理由が必要です。
ましてや、ドラえもんのひみつ道具があるとはいえ、のび太たちは小学生です。
「命の危険を冒してでも絶対に助けたい!」というモチベーションが必要です。
(以前、考察紹介した「動機付け」の理屈です。)
そこで、物語の前半で大統領パピを匿う過程で、事情を知り、パピの真っ直ぐな性格を知り、コミュニケーションを交わす中で友情を育てていました。
こうすることで、パピが誘拐されたことは、「助ける理由がない赤の他人ごと」ではなく、「命をかけて助けるべき親友」に変化していました。
大統領パピが失われた時の悲しみや怒りを大きくしていたのです。
また、この「匿い劇」が秀逸なのは、緊張感もセットであるということです。
お伝えした通り、前半のストーリーは、パピとの友情を深めることが目的です。
その目的だけなら、ただダラダラと日常を過ごすだけでもいいのですが、それだと、物語に緊張感が生まれません。
そこで、日常生活を共にする+敵も誘拐しようと襲ってくる、をセットにしたのが、この「匿い劇」の優秀な性質と言えます。
「誘拐劇」になってしまったら、そもそも当事者はその場にいませんので、友情や関係性を深めることが出来ないですし、基本的には犯人捜査/逮捕へ全力が注がれるのが普通なので、人間ドラマなどを描くのには大変不向であるため、やはり「誘拐劇」のフリとして、「匿い劇」が有効であると言えるのです。
以上、『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』という作品に秘められたの面白さの正体についての解説と考察でした。
ご高覧くださり、ありがとうございました!
「匿い劇」は「誘拐劇」の有効なフリになる!
この記事を書いた人
~物語論研究20年~
~処女作が大手小説新人賞一次に通過~
~ポートフォリオ作品が新人賞最終選考~
~高い実績を持つ業界専門家から指導経験有~
~文章/文書に関し多くの資格を保有~
~大手外資系企業勤務(一流社畜)~
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