今回は、国民的人気アニメーション作品『クレヨンしんちゃん』の映画『電撃！ブタのヒヅメ大作戦』をご紹介します。

友情や家族の絆など、エモいシーンも満載で一見の価値ありです！
特に、お色気がママと戦う際「母親である自分の方が強い」というセリフなんかは、珠玉です。
最後にぶりぶりざえもんが助けに来るシーンや、筋肉の「俺にも子供がいる。だからお前たちの気持ちは分かってるつもりだ」なんかもいい感じ。

また、キャラクターの名前なんかでもコードネームやそのキャラクターの特徴に沿った名前にすることで、視聴ストレスが軽減されていたことも、光るポイントでした。

さて、本作の根本的な面白さはいろいろな要因があると思われますが、本項では少し基本に立ち返り、主人公「野原しんのすけ」というキャラクターにスポットを当て、彼のストーリー的効果に迫ってまいりたいと思います。

結論から言うと、「ありとあらゆるトラブルを引き起こしてくれる存在」です。

以前よりお伝えしている通り、物語を成立させるためには、「波風を立てる」ことが必要です。
戦い、ぶつかり合い、葛藤、ケンカ、事件、トラブル、想定外、秘密、届かない目標、などなど。
これら、一筋縄ではいかない問題や壁が起こり、それを乗り越えることが物語の本質です。

逆に、ただただ平和で平凡な日々が流れるだけでは、ただの日記にすぎません。

で、この「波風」を立てるために、いろいろなアプローチが存在しますが、そこで大活躍するのが、「野原しんのすけ」というキャラクターです。
ご存じの通り、彼はいつもおバカないたずらをしては、母親である野原みさえを怒らせ、父親である野原ひろしを困らせます。
周囲にも多大な迷惑を振りまき、泣かされた人数と回数は星の数ほどです。

そもそも、この子供キャラクターというのは、自然に「波風」を生んでくれる存在です。
大人のように強い理性や制御心がないので、無邪気に立ち回りますが、大人のように器用でもなければ、強くもありません。
あれこれ派手に動く割に、トラブルへの対応力は反比例です。
はしゃぎ回ってケガをしたり、警戒心がなく知らない人について行ったり、冒険心で危ない場所に向かったり。
自分の気持ちに正直で欲にとても忠実です。

ただ、子どもキャラクターにおいて、唯一、持ち合わせていないトラブル要因があります。
それが「色気」です。
普通、子どもは性に目覚めてないので、恋愛や色欲でのトラブルとはほぼ無縁です。

そこで、子どもキャラにその「色気」というトラブル要素を加えたのが、「野原しんのすけ」という存在です。
作中でも大人の女性をナンパしまくり、みさえからしょっちゅうゲンコツを貰っています。
あくまでも子どもなので、下品になりすぎないのも利点ですが、大人の理性がないので、積極的にトラベルに向かって動けるのも扱いやすい設定です。
（大人は理性というブレーキがあるので。）

つまり、「野原しんのすけ」というパーフェクトトラブルメーカーが、本作のあらゆる波風を演出してくれており、ストーリーの世界においても、とても重要な人物だということが言えます。

補足ですが、戦争映画やテロリズム映画なんかでも、激しい銃撃戦の中でドカドカ市民が殺されているのに、ふと見ると、子どもが一人で泣きわめいていたら、ケガを覚悟で助けに行き、主人公が重傷を負ってしまうといった使い方ができるのも、子どもキャラクターの利点と言えるでしょう。

以上、『クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦』という作品に秘められたの面白さの正体についての解説と考察でした。
ご高覧くださり、ありがとうございました！