【面白い物語.63】映画『デス・レース2』
【今日のつまらない無駄話(導入)】
よく追い詰められた人が「明日が見えない」って言いますけど、
そもそも「明日」を見たことある人なんているのかな?
( -_-)
さて!
会心の屁理屈が決まったところで、本日は見えないほどのスピードで車を爆走させる、世界一危険なレーシング・ムービー第2弾のご紹介です!
『デス・レース2』
【基本情報】
■メディア:映画
■ジャンル:バイオレンス・カーアクション
■放映時間:1時間40分
■発表年度:2010年
■製作の国:アメリカ合衆国
■映像監督:ロエル・レイネ
■脚本作家:トニー・ジグリオ
■興行収入:不明
カール・ルーカス役
演:ルーク・ゴス
(当時:42歳)
マーカス・ケイン役
演:ショーン・ビーン
(当時:51歳)
カトリーナ・バンクス役
演:タニット・フェニックス
(当時:30歳)
ゴールドバーグ役
演:ダニー・トレホ
(当時:66歳)
リスト役
演:フレデリック・コーラー
(当時:35歳)
ビッグ・ビル役
演:デオビア・オパレイ
(当時:39歳)
セプテンバー・ジョーンズ役
演:ローレン・コーハン
(当時:28歳)
R・H・ウェイランド役
演:ヴィング・レイムス
(当時:51歳)
【ざっくりあらすじ】
マフィアである主人公は、ある日、銀行強盗に失敗し投獄される。
刑務所内で行われるレースに参加し、5回優勝すれば釈放という条件を知る。
そのレースは「デス・レース」と呼ばれ、文字通り命を懸けた死のレースだった。
【ちょっと感想】
シリーズ第2弾となり、主人公含めキャストは大幅に変わりましたが、ちゃんと面白かったです。
ステイサム様の存在は名残惜しいですが、ストーリーの性質上、キャストの変更は吉と出ていたと感じます。
ああいう潔いクズ女キャラも、とてもエモいです。
物語りの順番を入れ替える「前日譚」という技法に関しては、よい復習の機会となりました。
痛快なバイオレンス・カーアクションを楽しみたい方は是非、1を観てからご覧ください!
追伸:この作品を見て「ボクも将来、ミスユニバースの審査員になる!」という夢ができました。
【映画】『デス・レース2』が面白い理由
(ストーリー論的に考察・評価・レビュー)
今回は、「デス・レースシリーズ」の第2弾『デス・レース2』のご紹介です。
ディストピア、バイオレンス、レーシングスリル、などなど、らしい面白さが引き継がれた続編作品でした。
ご覧いただいた方はお分かりの通り、本作は、いわゆる「前日譚(シークエル)」という構成でした。
要は、1の続きではなく、過去が描かれた作品です。
ストーリーの順番としては、2→3→1の流れです。
このように、そのままの順番ではなく、あえてあべこべの順番で描かれることは、ストーリー作品ではよく見受けられます。
専門用語では「非線形の語り口」「フラッシュバック」「フラッシュフォワード」「イン・メディアス・レス」なんて言うそうです。
順番を入れ替えるなんて、普通なら流れが分かりにくくなりそうなものですが、当然この描き方にも、一定のストーリー的効果があると考えられます。
本項では「物語りの順番を入れ替える効果」について、その用法や性質なんかを整理、考察していきたいと思います。
まず、最大の効果としては「物語のフリを面白くできる」という部分です。
これは、長編ストーリーなんかで特に有効なものです。
例えば、ドラゴンクエストのような冒険ストーリーの場合、以下の流れが王道だと思います。
1.生まれた町から旅に出る。
2.修行して強くなる。
3.仲間を集める。
4.ダンジョンで幻の武器を手に入れる。
5.魔王の居場所を突き止める。
6.魔王と対峙し勝利を収める。
当然、一番盛り上がるのは6の場面で、1~5までは、6に至るまでの前フリです。
ストーリーの序盤で「魔王を倒す」という目的が語れるので、視聴者は早くからそのクライマックスに意識が行きますし、1の段階で出て来るただの町の少年には興味をそそられにくいです。
いろいろな理由から、前フリとして扱われる1~5の部分は、どうしても冗漫になりがちです。
他の例えだと、バトル系の少年マンガなんかで、敵のアジトに潜入し、目の前に敵が現れて「俺はこの組織のNo.4だ!」と言われても、「いや、早くNo.1との戦いを見せてよ…」となります。
そこで、本作のように、一番の盛り上がりを見せる部分を最初に描いてしまう方法が有効です。
先に6のエピソードを描き切った後に、過去エピソードとして1~5を語ると、
「あの超カッコいい勇者が過去はどんな子供だったのか?どういう道のりがあって、ここまで立派な存在になったのか?」という興味が生まれます。
つまり、「すごい奴の過去」に意味変させることで、前フリの価値を飛躍的に高めることが出来る理屈です。
かの有名な「スター・ウォーズ」でも、この技法が使われております。
先に漆黒の適役であるダースベイダーを見せておいて、後々にシリーズで子供時代を演出し、「こんなかわいい子供がどうやってあんな悪いダース・ベイダーになったんだ!?」という価値を生んでいました。
無論、そのキャラクターが視聴者にとって魅力的であり、「もっとこの人のことを知りたい!」と思えるような魅力作りは必須になります。
(個人的には『鋼の錬金術師』に出て来るオリヴィエ・ミラ・アームストロング少将の過去エピソードがメチャクチャ読みたいです。)
少し話は逸れますが、エンターテインメント業界の制作的大人の事情として、一番盛り上がる部分を先に魅せて、ヒットさせて、次回作の予算を取るというのもあるそうです。
もちろん、そのままの順番で描いて、成長譚や途中過程のイベントをドラマチックに面白くすることはいくらでも可能ですし、そのメリットも存在します。
しかし、それにはどうしても、一定以上の力量と工夫が必要なので、このように「前日譚」として初めから順番を入れ替えてしまうことは、効率的な描き方と考察します。
本作の1~3はそれぞれのストーリーも面白かったですが、前日譚を起用することで、「あの覆面フランケンシュタインはどうやって生まれたのか?」という強い引きを仕掛けることが出来ていました。
以上、『デス・レース2』という作品に秘められたの面白さの正体についての解説と考察でした。
ご高覧くださり、ありがとうございました!
ストーリーの順番を入れ替えることで前フリに価値が生まれる!
この記事を書いた人
~物語論研究20年~
~処女作が大手小説新人賞一次に通過~
~ポートフォリオ作品が新人賞最終選考~
~高い実績を持つ業界専門家から指導経験有~
~文章/文書に関し多くの資格を保有~
~大手外資系企業勤務(一流社畜)~
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