今回は大勢の名優が活躍を見せたテロリズム・アクション映画『ザ・ロック』のご紹介です。

『007』シリーズの初代ジェームズ・ボンド役として活躍した「ショーン・コネリー」が出演する、最後のヒット作と言っていいのではないでしょうか。
「ニコラス・ケイジ」とのダブル主演となり、脇を固める俳優陣も名優が多く、後に活躍していく役者の若手時代の活躍なども、エモい作品でした。

やはり、登場人物たちのデザインも秀逸なものが見受けられます。
共感できる復讐劇をベースに、根っからの悪党ではないハメル准将（演：エド・ハリス）の葛藤は筋が通っていました。
そして、汚い仕事に手を染めた闇の住人ながら、やはり一人の人間として娘の存在を気に掛けるキャラクター・ギャップなど、温度を宿す演出が多々見受けられました。

さて、いろいろな面白さが内包された本作ですが、本項では、「戦力外の重要人」というキャラクター属性において考察、解説させていただきます。

「戦力外の重要人」とは、その名の通り、「戦いには向いてないけど、死んだら困るメチャクチャ重要な人」という意味です。
本来は戦闘員とかではないのに、ひょんなことから、戦地に巻き込まれたり、強制的に同行させられる人たちのことです。

例えば、
・敵の暗号を解ける学者やプログラマー。
・戦地で唯一、世界を救える数字配列を記憶している少女。
・テロに巻き込まれ、敵地でボディーガードと二人っきりになった大統領。
などなど。

本作では言わずもがな、スタンリー・グッドスピード（ニコラス・ケイジ）がその人でした。
彼は一応FBIの捜査官ではありますが、専門は化学兵器であり、実戦経験は皆無。
しかし、敵地で敵が強奪した化学兵器を無効にできるのは彼だけ。
そこで、不本意ながら、強制的に潜入作戦に同行することになります。

この「戦力外の重要人」には、ストーリーを面白くする要素がいくつか含まれています。
例えば、
・弱いので、味方チームにとっての弱点や不安要素になる。
・素人なので、恐怖に負けて逃げるとか、想定外の動きをするとか、自然なピンチが生み出せる。
・手練れではないので、戦闘においてはノーマーク。いざという時にピンチを救う隠し玉。
などなど。

それに加えて、もうひとつの役割があります。
以前、『デス・レース』という作品で考察紹介した、「人物レベルで緊張と緩和を生み出す」というものです。
（詳細は過去記事をご高覧ください。）

強者同士のドンパチではずっと緊張感が続き、また遠い世界の話ですが、その中に一人、へっぴり腰のヤツや、弱いヤツを入れることで、自然と緩和が生まれ、また視聴者に心理的な入口を作ってあげることが出来ます。
頼りなく見えるキャラクターですが、実は脚本術においては、とても頼りがいのある重要な役割を担っていると言えます。

以上、『ザ・ロック』という作品に秘められたの面白さの正体についての解説と考察でした。
ご高覧くださり、ありがとうございました！