今回は、国民的長寿アニメ『クレヨンしんちゃん』の劇場版第５弾『暗黒タマタマ大追跡』のご紹介です。

90年代ということもあり、下ネタを基調としたしんちゃんワールドが炸裂の痛快コメディ作品でした。
ひまわりがタマを飲み込んでしまうことで野原一家が運命共同体となり、抗争に巻き込まれ、簡単には逃げられない状況を作り、いろいろなドタバタ劇が展開されていました。

飛躍的にアニメーション技術が向上する昨今、少し古い印象を感じてしまう映像かもしれませんが、ストーリー内容としてはエモい部分も多く、とても面白いものです。

さて、今回は、端的に映像技術を利用した、ある小技について、解説考察させていただきます。
その小技とは「高さ」についてです。

クレヨンしんちゃんの映画でも、最後の大勝負の場面などでは、ビルの屋上や、建造物の最上階など、地上の人が豆粒ほどの小ささになるほどの場所で行われることが多いです。
サスペンスドラマなんかでも、大海原をバックに、断崖絶壁に犯人を追い詰めるのは、鉄板中の鉄板です。

なぜ、このような高い場所で行われるのか、その効果はいたってシンプルで「緊張感を高められるから」です。

画面の中で、キャラクターが追い込まれていたり、きつい、辛い状況にいることをリアルに感じてもらえれば、臨場感を増します。

しかし、それらはあくまで絵に描いた餅、なかなか感じ取ることが出来ません。
例えば、殴られるシーンを見ても痛みは感じないし、灼熱や極寒の映像が流れも、皮膚感ではそれを感じれません。
激辛を食べて涙を流していても、味まではリアルに感じ取ることが出来ません。

しかし、「高さ」に関しては、特別です。
現実でも、画面の中の物語でも、高い場所から下を見下ろすという行為に、ほぼ差はないので、視界はある意味、真実（リアル）です。

実際、高層ビルから下を見下ろして足がすくんだり、手に汗を握る状況をリアルに感じ取れるので、心拍数が挙がったり、心理的にハラハラドキドキの緊張感を味わうことが出来ます。
これが、ストーリー内容により切迫感や緊張感を持たせるのに有効であるからこそ、よく決戦の場などで利用される意図があると考察します。

本作では特に、ビルの屋上に大勢が集まり、床が抜けて落ちかけるシーンが何度か描かれていたことで、より「高さ」の利点を強調したバトル展開となっていました。

以上、『クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡』という作品に秘められたの面白さの正体についての解説と考察でした。
ご高覧くださり、ありがとうございました！