■本日の導入
***この記事は2020年4月に執筆したものです***
悲しいニュースが続きますね。
彼の功績を称え、そして敬意を表し、約30年の歴史を誇る国民的アニメーション作品の中で、屈指の名作をご紹介申し上げます。
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』
■メディア:長編アニメーション映画
■ジャンル:タイムスリップ・コメディ
■放映時間:1時間35分
■発表年度:2002年
■製作の国:日本
■原作作家:臼井 儀人
■映像監督:原 恵一
■脚本作家:原 恵一
■興行収入:約13億円
野原 しんのすけ
声優:矢島 晶子
(当時:35歳)
野原 ひろし
声優:藤原 啓治
(当時:38歳)
野原 みさえ
声優:ならはし みき
(当時:42歳)
野原 ひまわり
声優:こおろぎ さとみ
(当時:40歳)
シロ
声優:真柴 摩利
(当時:43歳)
井尻又兵衛 由俊
声優:屋良 有作
(当時:54歳)
春日 廉
声優:小林 愛
(当時:29歳)
春日和泉守 康綱
声優:羽佐間 道夫
(当時:69歳)
大蔵井 高虎
声優:山路 和弘
(当時:48歳)
戦国時代にタイムスリップしてしまった主人公一家は、偶然にもある武士の命を救ってしまう。
その武士は国の姫に恋心を抱いていたが、身分の差から叶わぬ恋に悩んでいた。
ある時、姫は隣国の大名から結婚を申し込まれたが、断ったことで大戦に発展してしまう。
【ちょっと感想】
子供向けアニメでありながら、大人も楽しめる人間ドラマが盛り込まれた至高の作品です。
熱くなる展開、エモいシーンもバッチリです!
ストレスなく、人として心の大切さを考えさせてくれます。
でもさ、やっぱりハッピーエンドで終わってほしいよね…。
本作を原案として草彅剛さん、新垣結衣さん競演の実写化作品が生まれたほどの名作を是非!
追伸:
藤原啓治さん、早すぎます。
本当に大好きな声でした、貴方の代わりはいません。
衷心、ご冥福をお祈り申し上げます。
【アニメ】『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』が面白い理由
(ストーリー論的に解説)
さて、本ブログにおいて、アニメ作品のご紹介、第一弾として『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』をチョイスさせていただきました。
「クレヨンしんちゃん映画」記念すべき第10作目にして、シリーズ最高傑作との呼び声が高い作品です。
感動の部分でも触れた通り、感動大作と呼ぶに相応しい素晴らしい作品です。
長編アニメーション映画であり、国民的アニメの映画化でありと、考察すべきポイントは多くあるのですが、本項では物語の基本的なところに立ち返りながら、「タイムスリップもの」について考察、紹介させていただきます。
本作は、主人公一家(野原一家)が戦国時代にタイムスリップしてしまい、あれこれ困りながら、どんちゃん騒ぎとなるストーリー展開でした。
本作をはじめ、「タイムスリップ」という設定はストーリーものではよく目にする設定です。
「戦争もの」「ゾンビもの」「監獄もの」などなど、多用される設定には、当然のことながら、物語的にいい影響があるためです。
結論から言うと、「タイムスリップもの」が物語に多用されるのは、「自然な形で対立を生んでくれる」という点です。
(「タイムスリップ自体が自然な現象じゃないじゃないか!」という正論ツッコミは一旦、横に置いて下さい。)
以前、別の作品でご紹介した通り、物語の基本は「対立」「ぶつかり合う」「葛藤」「ケンカ」などです。
対立するのは、人でも、気持ちでも、チームでも組織でも、何でもいいですが、要は、「スムーズに物事を運ばないこと」「波風を立てる」が重要です。
例えば、
「ある村に、世紀の大秘宝を探し求める少年がいました。少年はすぐにその秘宝を手に入れました。めでたしめでたし」
では、物語になりません。
困難が起こって、ライバルが現れて、仲間を手に入れて、挫折して、強くなって、やっと手に入れるから、その過程(ストーリー)が面白くなります。
もちろん、こういった「物語をスムーズに進めない設定」は、ありとあらゆるものがありますが、その中でも、有効性が高く、便利な設定が「タイムスリップ」という訳です。
本作では、平和な現代に住む主人公野原一家が、荒くれの戦国時代にタイムスリップするという内容でした。
住む場所、時代、価値観、状況、何もかもが全く違う人たち同士が出会ってしまうことで、「知らない」「分かり合えない」「理解できない」という「対立」が自然と生まれます。
もちろん、登場人物たちは、互いにタイムスリップなんて起こるはずないと思ってるので、
「あぁ、君たち未来から来たのね? おけおけ、理解した。よろしくね~」
とはなりません。
「おのれ、急に現れおって! 貴様さては妖怪だな? 成敗してくれるー!」
「ちょ、ここどこ? 何これ? 一体、何がどうなってるんだー!!?」
などなど、いろんな対立が自然と生まれていきます。
例外として、映画『ターミネーター』に代表される通り、どちらか片方がタイムスリップを理解してて、過去に危機を伝える、といった設定もありますが、それでも、やはり、同じように「対立」は生まれます。
「話を聞け! 急がないとこの世界は滅びる!」
「は? 未来から来た? 何言ってんの? バカじゃね?」
といった感じ。
以前、対立を生む技法として、「凸凹コンビ」という技法を紹介しましたが、「凸凹コンビ」が性格レベルで対立を生むのに対し、「タイムスリップもの」は環境や状況レベルで対立を生む性質があります。
また、登場人物たちは「訳が分からん」といった混乱状態ですが、視聴者は状況を完全に理解してます。
なので、
「タイムスリップしたから、こういう風になるのは当然だよねぇ~」
といった感じで、余計な説明(ダラダラ長いセリフ)が不要というのも魅力のひとつです。
タイムスリップ先を、そもそも波風が立ちまくっている「戦国時代」や「戦争環境」にするのは、常套手段ですが、
本作『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』が秀逸、かつ丁寧だったのは、武士である井尻又兵衛由俊(いじりまたべえよしとし)とお姫様である春日廉(かすがれん)の恋模様を演出できていたことでした。
身分が違う者同士からと言って、諦めていた両想いの二人でしたが、現代人である野原しんのすけの話(二人が愛し合うだけで結婚できる)を聞いて、身分にかかわらず結ばれる世界が存在することをしり、抗う気持ち(心の葛藤)が生まれていました。
これも、「タイムスリップ」という設定が生み出した対立であり、とっても上手く絡めていました。
視聴者は現代人としての価値観(身分で差別するのはおかしい!)で見るので、
「身分なんてクソくらえ! 両想いなんだから一緒になるべきだ!」といった、強い希望をもって作品を見ることになるので、没頭感が生まれるカラクリです。
正味なところ、「主人公一家が現代に戻れるかどうか?」という部分に大した引きはありませんが(どうせ戻れると思われてるので)、戦国時代という舞台もあり、「この二人が結局どうなるのか?」というのは、結末が予想できないという情報価値(結局どうなる?)があったことも、面白さの秘訣だったと考察します。
もちろん、従来のクレヨンしんちゃんシリーズとしての味もたっぷりで、見事な融合を見せていたことも、面白さを邪魔していませんでした。
「タイムスリップもの」において、過去や未来人を現代社会にタイムスリップさせるのか、本作のように、現代人を未来や過去に送るのか、はたまた、そこは現実の世界なのか、異世界なのかなどによって、取り扱い方や性質が異なりますが、その辺りはまたおいおい語らせていただきたいと思います。
以上、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』という作品に秘められたの面白さの正体についての解説と考察でした。
ご高覧、ありがとうございました!
「タイムスリップもの」は、物語として便利な設定!
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