■今日のつまらない無駄話(導入)
新型コロナウィルスのワクチン接種の影響で腕が痛い…。
( ;ω;) イタイ…
コロナのせいで旅行も行けないし、検査も面倒だし、
早く特効薬が市場に出てこないかなぁ~。
そうすれば、その薬を神のように崇めたいですよ。
(-人-)
さて!
本日はそんな薬にまつわり、神のように崇められる男が登場する、おすすめ中国社会派ドラマ作品のご紹介です!
『薬の神じゃない!』
■メディア:映画(アジア)
■ジャンル:社会派ドキュメンタリー・ドラマ
■放映時間:1時間56分
■発表年度:2018年(日本公開/2020年)
■製作の国:中国
■映像監督:ウェン・ムーイエ
■脚本作家:
ウェン・ムーイエ
ハン・ジャニョ
ジョン・ワイ
■興行収入:約456億円
チョン・ヨン役
演:シュー・ジェン
(当時:46歳)
リュ・ショウイー役
演:ワン・チュエンジュン
(当時:33歳)
リウ・スーフェイ役
演:タン・ジュオ
(当時:35歳)
ボン・ハオ役
演:チャン・ユー
(当時:36歳)
リウ牧師役
演:ヤン・シンミン
(当時:61歳)
ツァオ・ビン役
演:ジョウ・イーウェイ
(当時:36歳)
小さな薬局を経営する主人公はお金に困っていたが、
ある時、インドから格安の白血病薬を密輸し、中国で販売する商売に手を染める。
仲間を増やし、事業を拡大し、大儲けを成し遂げるが、
そこに警察や製薬会社、ライバル業者などが介入し、事態は行き詰って行く。
【ちょっと感想】
何故、日本語の吹き替えが存在しないのだ!
名作です、是非とも吹き替えで見たかった…。
中国の医薬業界改革のきっかけになった史実を元に描かれ、本土で500億の興行収入を記録したメガヒット作品を是非ご覧ください!
追伸:ボクも「タダラフィル」というジェネリックには大変お世話になりました。
【映画】『薬の神じゃない!』が面白い理由
(ストーリー論的に考察・評価・レビュー)
今回は、中国映画『薬の神じゃない!』のご紹介です。
2022年7月時点でも、中国映画の国内歴代興行収入ランキング14位に輝く名作です。
制作費は7500万元(約11億円)だったそうですが、当時の興行収入は約31億元(約465億円)に達し、2018年度の中国国内興行収入第3位にランクインするほど。
ストーリー内容は2014年に起きた「陸勇事件」という実話に基づくもので、中国医薬業界に革命をもたらした薬の密輸事件です。
また、中国では表現の規制がとても厳しいらしく、本作のような社会風刺作はいろいろと難しい事情がある模様ですが、その辺りも堂々と表現されています。
何かと話題の多い作品ですが、ストーリー内容としても、とても面白く、一見の価値ありな名作です。
日本語吹き替えがないところを見ると、日本ではそこまでフューチャーされていないことも伺えますが、見逃し厳禁の掘り出しものと言えるでしょう。
さて、本項では、プロット術(脚本構成)としても有名な「贖罪(しょくざい)プロット」という技法に焦点を当てつつ、作品の面白さについて解説させていただきます。
「贖罪(しょくざい)プロット」とは、平たく言うと、「もともと悪い人がいい人に変わっていく」という変化構成です。
いわゆる、作中の中で登場人物たちの「成長」や「変化」を感じられるので、見ている側としても、一定の面白さや嬉しさを感じることが出来ます。
(我が子やペット、飼育植物の成長が嬉しいあの感じと似ています。)
本作では、主人公のチョン・ヨン(演:シュー・ジェン)の変化が目覚ましいです。
彼は最初、とてもだらしない金の亡者でしたが、友人の死をきっかけに私財や儲けをかなぐり捨てて、病気で困る人たちのために奔走するようになっていきます。
そして、主人公の義理の弟である刑事ツァオ・ビン(演:ジョウ・イーウェイ)も、最初はニセ薬事件を全力で追っていましたが、実際はその薬が大勢の命を助けていることを知り、「もう自分はこの事件を追えない」と心変わりします。
また、チームメンバーであり、金髪の白血病患者ボン・ハオ(演:チャン・ユー)は、一度、主人公チョンを見損ないますが、チョンが心を入れ替えた様子を見て、再び協力する姿勢を見せます。
(正確に言うと「贖罪」ではありませんが、類似技法です。)
このように、作中で登場人物たちの目的や倫理観などが変化するのは、ストーリー的にいい効果をもたらすので、多くの作品で多用されています。
しかし、この技法を使う上では、注意しなければいけないことがあります。
それは、「強い動機付けが必要」ということです。
人の考え方が変化するというのは、とても大きな出来事です。
自分が信じて来た正義や倫理、渇望していた目的が変わってしまうというのは、よっぽどのことです。
つまり、人ひとりの考えを根底から覆すには、それ相応の強い理由が必要だということです。
この理由を描かずに、いきなりコロッと変わってしまっては、視聴者は混乱し白けてしまいます。
先ほど説明した通り、主人公のチョンは、友人の死によって心変わりしました。
近しい人の死は人の考え方を変える理由としては十分なので、よく使われる展開です。
しかし、本作がより秀逸だったのは、その辺りの動機付けや、心の変化がとても丁寧に描かれていたことです。
例えば、いくら友人の死が訪れたとしても、突然、お葬式の通達が来て、遺影を眺める、といった演出だけでは、視聴者にとってはそこまで強い刺激にはなりません。
・友人の奥さんが現れて、泣き崩れて助けを乞う。
・病気の治療で身体に生々しい穴が開けられ、激痛に泣き叫ぶ。
・化学療法の影響で髪の毛が抜け落ち、血色のない表情で家族を弱々しく見つめる。
これら、心に響く演出を経て、初めて、主人公の心情変化に納得することが出来ます。
友人のリュ・ショウイー(演:ワン・チュエンジュン)が冒頭で「パパと呼ばれたい」というシーンも、泣ける伏線として効いていました。
(「子どもにパパと呼ばれたいなんて健気な夢すらも叶わなかったんだ…。こんなことってあるかよ…」)
これらのように、「贖罪プロット」としては、心持が変わる「きっかけ」を用意することも重要ですが、そのきっかけに対しても、丁寧かつ、心を揺さぶる「過程」を描くことが重要だと言うことが言えるでしょう。
以上、『薬の神じゃない!』という作品に秘められたの面白さの正体についての解説と考察でした。
ご高覧くださり、ありがとうございました!
登場人物たちの心情変化には強い動機付けが必要!
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